参院特別委員会での安保法案採決強行 2015年09月17日
2015年9月17日、つい先ほど、安保法案は与党等の
数の力により、参議院特別委員会において採決が強行
されてしまいました。
法案そのものに対する見解は別の機会に譲ることと
して、今回の採決を眼前で見た、その直後の思いを
率直に書き綴りたいと思います。
特別委員会での行政権である政府側の答弁は
安定せず、同じ内容の質疑に対し、衆議院での
答弁と参議院での答弁が全く異なるなど、法的
安定性を疑いかねない事態が頻発していました。
その証左として、総理等の閣僚が答弁に窮する場面が
多発し、やむを得ず特別委員長が速記を止めた回数は、
実質審議が始まった7月28日以降、114回にものぼります。
私は、昨年9月から、常任委員長である経済産業委員長
として、幾つもの法案審議について、委員会運営にあたって
きましたが、やむを得ず、速記を止めなければならなかった
場面は、たった1回だけでした。
速記が幾度も止まる=答弁が安定しない、ということは、
法の解釈が幾らでも変わり、法施行後の運用が安定
しないということにも繋がりかねません。
立法権である国会の委員会として、法案を提出した
行政権である内閣に対し、答弁が安定しない論点を
幾つも放置したまま採決に及ぶことは、与野党の
立場なく、看過できないものと考えます。
さらにいえば、安保法案を審議する特別委員会は、
最終盤において、これまでの参議院では例のない
強引な委員会運営があったことも指摘できます。
例えば、これまで中央公聴会と地方公聴会を連続して
開催した例を私は知りませんが、今回の審議において
は、9月15日に中央公聴会、9月16日に地方公聴会を
開催しています。
この点だけでも、特に問題と思える点がふたつあります。
まず、ひとつ目。
国会という場所は、国会法や議院規則等のルールを
大事にし、議会の先人が与野党問わず積み上げてきた
先例を大切にする場所です。
中央公聴会や地方公聴会は、それぞれ国会法第51条、
国会法第103条に規定がありますが、これらは重要な
案件について学識経験者等から意見を聴き、その後の
委員会審議を充実させるために行うものです。
事実、委員派遣を行ったときは、派遣委員が委員会で
派遣の結果について口頭報告を行い、委員派遣等の
結果を国政に反映させ、立法その他に資することとする、
昭和60年5月24日の参議院議院運営委員会理事会の
申し合わせと委員会先例があります。
にも関わらず、昨日、9月16日に横浜で行われた地方
公聴会の派遣結果の口頭報告が行われなかったばかりか、
意見を活かした形の質疑は全く行われませんでした。
国会法が意図する目的を無視し、公聴会や委員
派遣(地方公聴会)を、与党自ら有名無実化した
ことにほかなりません。
次に、ふたつ目。
これまで、委員派遣(地方公聴会)と委員会開会を
同日に行った例を私は2例しか知りません。昨日、
与党は強行的にそれを行おうとしていたことです。
結果、野党の激しい抵抗もあり、翌日に持ち越すこと
となりましたが、一体全体何のための委員派遣であり、
学識経験者等から広く意見を聴いたのか、という哀しい
思いでいっぱいです。
いずれにせよ、議会の先人が築いてきた先例を、半ば
破る形での委員会運営は、議会に身を置く者の一人と
して、筆舌に尽くし難い思いです。
また、採決の瞬間は、唖然とするものでした。
特別委員長の声も聞こえなければ、誰がどんな
行動をしようとしているのかも分からない。何の
採決をしようとしていて、何に対する発言を誰が
しているのかも分からない。
おそらくですが、特別委員長に対する不信任動議が
否決された後、与党側から質疑終局の動議が直ちに
出され、その後、派遣委員の報告を聴取することもなく、
その成果を活かすための質疑をひとつも行うこともなく、
法案の採決に入ったのだと思われますが、それはとても
酷い光景でした。
国権の最高機関であり、立法権である国会で、こんな
採決が認められるとは思いたくありませんし、議会人と
しては、認められません。
そしてまた、採決段階で、聞き取れる情報は、
なかったはずですので、会議録作成はどんなに
プロの速記者でも不可能だと思います。
委員会先例録では、議場騒然のため、速記不能の
箇所について会議録に補足掲載した例が挙げられ
ていますが、覚書等で補足掲載できるレベルでは
ありません。
議員として国政で活動させていただいて9年目。
最も辛い委員会採決となりました。
しかし、これからまだ本会議があります。
国会での役職上、最前線で動くことはできませんが、
最後まで諦めず、多くの国民の皆さまの思いを少しでも
届けられるよう、参議院議場で踏ん張ります。
最後に、委員会運営は、参院事務局の皆さん
抜きにはありえません。議員として、委員長として、
このことは、いつも感謝しています。
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