政治倫理審査会(2024年5月17日)
1985(昭和60)年に設置されて以降、一度も開会されることのなかった参議院政治倫理審査会ですが、今回の事案に際し、実質的な審査を行わざるを得ない事態になっており、審査申立てを全会一致で議決し、審査に入っていますが、3月14日に行った3名の議員による弁明と質疑の後は、規程第17条を引用した会長の要請文書によっても何も動きのない状態が継続しています。
よって、審査を前に進め、今回の事案の実態解明に少しでも近づけるために、規程第17条による議決を行うこととなり、全会一致で議決されましたが、その意味等を明らかにするため、議決の前に意見表明を行いました。
このような事態に至っていることは、参議院に身を置く一員として残念でなりませんが、問題の構造を明らかにするために、国会としての自浄作用を少しでも発揮できるよう努力するほかありません。
以下、意見表明の全文です(今回も公開で行われましたので全文をお示しいたします)。
参議院政治倫理審査会審査申立てに係る被申立議員の出席要求の議決に関する意見表明
令和6年5月17日
ただいま議題となりました「議員赤池誠章君外27名に対する審査申立ての件」及び「議員大野泰正君に対する審査申立ての件」に係る、参議院政治倫理審査会規程第17条に基づく、被申立議員の出席要求に関する件について、申立委員を代表して、意見表明を行います。
去る2月21日、参議院政治倫理審査会規程第1条及び第2条の規定に基づき、32名の議員について行われた審査の申立てを受け、3月8日の本審査会において、全会一致で審査を行うことが決定されました。
その後、申立てを受けた議員のうち3名から弁明の申出があり、同月14日の本審査会において、弁明及び質疑が行われました。
一方で、同日の質疑に先立ち、その時点において弁明することを求めないとの意向を示した29名の議員について、会長から、「審査会としましては、全会一致をもって審査すると決定したことにも鑑み、今後、その出席を得て、説明を聴き、審査できるよう、引き続き協議してまいります」との発言があり、書面による出席の働きかけを行うとともに、弁明を行った議員に対する質疑においても他の議員にも出席を促す旨、求めましたが、現在に至るまで新たな弁明の申出はありません。
去る2月27日に行った審査申立ての件に関する趣旨説明において、政治倫理綱領にある理念に則り、進んで本審査会に出席し、不記載等の経緯とその使途等について詳らかに説明した上で、立法に携わる一員として、政治的・道義的責任を明らかにすることを要求すると申し上げました。
刑事的に不起訴とされたこと、党内で処分を受けたこと等と、政治的・道義的責任は別であり、これを免れることはありません。
世論調査からも伺われるように、今回の問題の実態解明がない中で、派閥の解消や党内処分が行われても、なお国民の政治不信は、解消されないばかりか、かえって深刻化しているように思われます。
こうした状況を少しでも打開するため、参議院政治倫理審査会規程第17条に基づき、本審査会として、未だ出席を得られていない議員の出席及び説明を求めることを決定すべきと考えます。
去る3月14日の本審査会における弁明は、規程第16条に基づき、審査の申立てをされた議員の側が希望すれば、審査会側がその機会を与えなければならない手続であるのに対し、第17条に規定する出席及び説明の要求は、審査会が審査するため、必要があるときに審査会の権能として認められている手続です。
未だ出席の意向を示されない29名の議員の皆様におかれましては、この第16条と第17条の違いを強く認識していただく必要があります。
そして、本日、本審査会幹事会の総意として、第17条の出席要求の議決を行うことで合意し、かつ、議決後には、29名それぞれの議員に対し、会長名で、規程に基づく議決を正式に行った旨を公文書で通知することについても確認しております。
以上のように、丁寧に各会派の合意を重ねながら、適正に手続を踏んでいることの重みを29名の議員の皆様には是非とも理解いただきたく存じます。
先月、自由民主党の党紀委員会が派閥による政治資金の不適切な処理について審査を行うに際し、対象となった国会議員ら39名のうち31名が弁明書を提出したとされています。党に対しては弁明を行うことができるのに、なぜ、政治倫理審査会の場においては説明をしていただけないのでしょうか。
本院に議席を有する議員は、選挙区選出、比例代表選出を問わず、多くの有権者の方々から投票用紙にその名前を書いていただいている、こうした重みや責任に鑑み、「派閥事務局の指示だから」ではなく、議員として、国会において説明責任を果たす必要があるのではないでしょうか。
また、議会は言論の府です。
昭和60年に参議院政治倫理審査会規程が制定された際に、弁明の方法として、弁明書の提出で済ませる方法はあえて外された経緯があるとされます。
こうした議会の先人の思いに鑑み、やはり、申立対象となった議員の皆様には、本審査会に出席をいただき、説明を行っていただきたいと思います。
なお、3月に本審査会で行われた弁明及び質疑が公開で行われたことが、本審査会への出席を躊躇させる要因になっているかもしれませんが、2月27日の申立ての趣旨説明で述べた「この場において個々人についてあげつらうのではなく、冷静な審査を行うことで、今回の問題の構造を明らかにし、二度とこうした事態を発生させないことにつなげたい」との思いはまったく変わっておりません。
実態の解明に少しでもつながるならば、参議院政治倫理審査会規程第22条第1項に則り、原則どおり、審査会は傍聴を許さず、非公開で行うことで構わないと考えます。
それでもなお出席が得られないとなれば、国会法第124条の3に基づき、政治倫理の確立のために設置された本審査会を無視し、もはや事案に真摯に向き合うつもりがないと言わざるを得ません。
また、申立ての審査が一向に進まないことにもなります。
昭和60年の議院運営委員会理事会における申合せでは、「申立てを行った委員がすべて委員でなくなった場合においても、事案は存続するものとする」旨が定められています。仮に申立ての審査が進まず、本審査会の構成が変わっても事案が残り続けることは、すなわち、今回の問題が解決せず、国民の政治不信が継続することにほかなりません。
国政の重要課題は山積しています。
我々は、世論が分かれる課題にも取り組まなければなりません。こうした中で、国会が最終的に出した結論に対し、できる限り多くの国民の皆様に納得していただくためには、その基盤として、政治への信頼が欠かせません。
良識の府と位置づけられる本院として自浄作用を少しでも発揮し、そして国民の政治に対する信頼回復につなげるためにも、申立対象となった議員の皆様には真摯な対応をいただくよう求め、意見表明といたします。
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