吉川さおり 参議院議員(全国比例)

活動記録

議院運営委員会理事会

2023年11月9日

この日の議院運営委員会理事会では、憲法第63条の規定(※)に関連して国務大臣の海外出張に関する件について諮った後、令和5年版参議院先例録、参議院委員会先例録について完成の報告がありました。

参議院先例録の改訂は10年ぶりのことですが、現行の平成25年版参議院先例録、委員会先例録には個人的に大変お世話になり、勉強もさせていただきました。私が議運理事の任に初めて就いたのは2016(平成28)年1月のことですが、その前から法規先例の勉強をするにあたって欠かせないのが先例録だったからです。

そこで、令和5年版参議院先例録、参議院委員会先例録の概要について紹介したいと思います。

(1)先例の収録範囲

第208回国会(令和4年常会)までの先例、事例

(2)先例総数

令和5年版先例録:586号(平成25年版から14号増加)

令和5年版委員会先例録:422号(平成25年版から25号増加)

(3)平成25年版からの主な改訂

①制度・運用の変更の主な例

・情報監視審査会の新設
・行政監視委員会の行政監視の実施の状況等の報告
・会議録等のペーパレス化
・障がいを有する議員への対応
・新型コロナウイルス感染症への対応
②事例の追加の主な例
・開会式を行うに至らなかった例
・懲罰に関する例

法規先例に関しては、2期目に入ってから勉強を続けています。委員会質疑の中で議事法規に言及することも議員の中では最多ではないかと思いますが、野党第一会派の議運理事として、与党と対峙するためだけではなく、筋の通った議院運営のためには必須の知識だからです。

議会の長い歴史において、先例としてはならない例もあるわけで、そのような例が先例録に掲載されることはありません。ただし、先例録に掲載されなくとも、議会の前例とはなり、何かのきっかけで思い出したように前例として登場することもあるのです。

私は一度、この例は先例に掲載されるような例ではないと考えると委員会質疑で指摘したことがあります。委員会会議録に関する例ですが、議場騒然、聴取不能の中、速記が再開されたかどうかすら分からないまま、後に会議録の補足掲載がなされてしまった例です。

この補足掲載は過去に一度も例がないものばかりで、良い例とはまったく反対のものであり、今後繰り返されてはならない例でした。二度と繰り返されるべきではないとの思いで議運理事就任後の議運理事会で議論を重ね、その結果を決算委員会で質疑し、事実として委員会会議録に刻んだものです。

詳しくは、当時の委員会会議録をご覧いただければと思いますが、2016(平成28)年4月20日の参議院決算委員会の国会所管の部での質疑の最後に、私はこう指摘しました。

「今回答弁をいただいた中で、去年の9月の例が一例のみであるという、こういう例が残念ながら多うございました。またいずれ、参議院委員会先例録や参議院先例録が編集されるときが来ると思います。恐らく、このような例は先例録に載せるべきものではないと思いますが、議会の歴史の中で前例として残ってしまうと思います。このような例は繰り返すべきではないという思いを申し上げて、私の質問を終わります。」

このときに述べたことでもありますが、私は議会の先人の知恵で積み上げられてきた法規先例を大事に議会運営に携わるべきであると考えており、これに変わりはありません。

もちろん、法規と異なり、先例は時代によって変わっていく側面もあるでしょうし、墨守するものでもないと思います。ただ、先例に法的拘束力はないものの、これまでの議事運営の積み重ねであり、議会の先人の知恵の結果であるからこそ、十分尊重すべきものであると考えています。

令和5年版の参議院先例録や委員会先例録を手にとって、編集に携わられた参院事務局の皆様の思いを胸に、今後の議院運営や自身の勉強に活かしていきたいと思います。

※国務大臣の海外出張を議院運営委員会理事会で諮る理由(開会中のみ)

〇日本国憲法第63条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

憲法第63条の規定に基づけば、内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁のため出席を求められたときは、何時でも議院への出席が必要とされるため、開会中の海外出張に関しては、原則として議院運営委員会理事会の事前了解を得ることとなっており、衆参の議院運営委員会理事会が了解した後、出張となるのが基本です。よって、衆参議院運営委員会理事会に、内閣官房副長官が出席・説明し、了承を求めることになります。

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