総務委員会(2021年4月20日)
総務委員会で50分間の質疑に立ちました。
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案」、いわゆるプロバイダ責任制限法改正案の質疑でした。
急きょ、公職選挙法の条文誤りの件について確認する必要が生じたため、選挙は総務委員会の所管事項であること、民主主義の根幹である選挙に関わる法律の、しかも罰則の条文誤りという重要な内容であったことから、冒頭に事実確認だけした後、法案審議に入りました。
公選法の条文誤りは、2018(平成30)年7月、最大会派が各会派の合意を得ることなく強引に参院議員の定数増や特定枠創設を含む改正案を提出し、反対を押し切って数の力で成立させた、そもそも成立過程に問題が多い改正公選法に判明したものです。
選挙制度、とくに参院選挙制度改革については、参議院改革協議会を設置して、そこで1年17回にわたって議論してきましたが、最大会派はそこで議論にものぼらなかった定数増や特定枠創設を含む案を強引に提示し、強引にその案を短期間で提出し、成立に至らしめてしまったのです。
最大会派の参院議員提出による議員立法として提出されましたが、条文作成を補佐したのが参議院法制局です。当該法案成立後、公選法を所管する総務省が条文チェックをしていたところ、誤りに気づき、法制局に連絡したのが、2018(平成30)年12月だったことが、質疑を通じて明らかになりました。
非常に残念なことに、この罰則の条文誤りは質疑当日(2021(令和3)年4月20日)時点まで、参院法制局外部に報告されることなく、放置されていたのです。
現状で罰則をどのように適用するのか、法を誠実に執行する責務を有し、公選法を所管する総務省として、罰則の条文誤りが放置されている現状をどう考えるかなど、見解を質し、あとは議院運営委員会理事会で議論することとしました。
総務省選挙部長の答弁で、条文誤りのある状況は、本当に望ましくないこと、是正される必要があるものととあり、私も一刻も早い是正を最大会派に求めたところ、質疑後、罰則の条文誤りを是正する法案が提出されたことは是とします。
ですが、最大の責任は、民主主義の根幹である選挙制度を定めた公選法を数の力で一方的に押し切り、無理な作業を短期間で法制局に強いた最大会派にあることを各会派で共有したいと思います。
プロバイダ責任制限法は、2001(平成13)年に制定された法律ですが、本格的な改正は今回が初めてとなります。
法制定当時、インターネット上の誹謗中傷事案は、主としてインターネット上の掲示板が主たるものでしたが、今はTwitterをはじめとするSNSが主流となっており、名誉棄損やプライバシー侵害、人権侵害事案が多くなっています。
今回の改正案は、社会問題となっているインターネット上の誹謗中傷に対処するためのものであり、新たな裁判手続の新設等を行うものです。
現在、権利侵害事案が発生し、その発信者が誰であるか特定しようとしたときは、二段階の手続が必要ですが、これを新たな裁判手続=非訟手続を新設することにより、開示の迅速化をはかることが可能になります。
ただ、現行手続に比べ迅速化がはかられるとともに、非訟手続は費用負担も軽く、事案が増える可能性があります。
裁判手続の新設に伴う裁判所の負担や被害者の権利回復の観点からは、制度の使いやすさが重要ですが、従来よりも手続・割安な費用となることにより、手続の悪用・濫訴のおそれについて総務省や法務省の見解を質しました。
また、今回の改正で非訟手続が新設されますが、最終的に採用されたのは、非訟と訴訟手続のハイブリッド形式です。
つまり、争訟性が低く、非訟手続限りであれば早期解決が可能ですが、裏返せば、争訟性が高く、非訟手続ののち異議申立てが行われ訴訟に移行する場合には、時間がかかることが考えられます。
様々な事案があり得る中で、非訟・訴訟いずれにしても、裁判所の判断の迅速化をはかっていく必要性があります。
さらに、円滑な被害者の権利回復の一方、表現の自由やプライバシー、通信の秘密といった発信者の権利利益の保護等も大きな問題です。発信者の意見照会についての方策や開示判断の透明性確保策、事例の蓄積の重要性についても総務省の見解を質しました。
本改正は、新たな裁判手続を通じて、迅速な被害者救済につなげるものですが、被害者救済と表現の自由と通信の秘密とも関連する難しい課題でもあります。
施行5年後の見直し規定が設けられていますが、どのようなデータがそれにふさわしいか今から検討すべきと指摘しましたし、必要があれば、5年を待たずに適切に対応するとの答弁もありましたので、注意してみていきたいと思います。
[質疑項目(プロバイダ責任制限法改正案)]
1.公職選挙法の条文誤りについての見解[総務省、参議院法制局]
・公選法条文誤りについての事実関係の把握状況
・公選法条文誤りに係る罰則適用についての見解
・法に誤りがある現状に対する認識
2.インターネット上の誹謗中傷の現状と対策[総務省]
・インターネット上の誹謗中傷の発生状況
・問題となっている権利侵害事案の類型
・法制定(2001年)以降改正と省令改正の回数
・これまで非訟手続が盛り込まれなかった理由
・改正法の施行期日
3.裁判手続を新設した最近の立法例[総務省]
・裁判所による決定手続を新設した最近の立法例
・裁判手続を新設した最近の立法例における公布から施行までの期間
・改正法施行より前に起きた権利侵害事案への対応可否
4.裁判所の役割と負担[総務省、法務省]
・法改正前提となった研究会に最高裁が途中参加となった理由
・裁判手続の新設に伴う裁判所の負担
・原稿手続と新設される非訟手続において必要となる主な費用
・手続の悪用・濫訴のおそれ
・検察庁法改正案策定経緯文書の内容の是否
・公文書の作成、管理の現状に関する行政評価局調査の必要性
5.非訟手続新設による解決の迅速化[総務省、法務省]
・非訟手続による審理期間短縮化の程度
・訴訟、非訟に関わらず裁判所の判断迅速化の必要性
6.発信者の権利利益の保護[総務省]
・発信者の意見照会が確実に行われる方策
7.開示判断基準の蓄積と透明性確保策[総務省]
8.2020(令和2)年8月の省令改正と本法案の見直し規定[総務省]
・省令改正による被害者救済実績件数
・省令改正の事後評価の在り方
・改正法の見直し規定と見直し時期の在り方
・5年後見直しにおける効果検証の際に必要なデータの在り方
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