2009年11月25日国会質疑録
国民生活・経済に関する調査会
質疑模様、阿部参考人
11月25日の国民生活・経済に関する調査会では、
3人の参考人から意見を聴取した後、意見や見解に対する質疑を行いました。
※調査会とは、参議院に設けられた独自の機関です。
参議院に解散がなく、任期が6年であることに着目し、
長期的かつ総合的な調査を行う目的で設けられて
います。設置される調査会の名称、調査事項及び
委員数は、原則として、通常選挙後最初に召集され
る国会において、議院の議決により定められることと
なっています。こうして設置された調査会は、おおよそ
3年間(議員半数の任期満了の日まで)存続します。
本調査会では、「高負担・高福祉国家の国民は総じて国民幸福度が高い」
との仮説に基づき、有識者の意見を聴取し、質疑、ならびに委員間で議論
を行っています。
11月25日は、次の事項について参考人から意見を聴取し、質疑を行いました。
「諸外国のくらしと社会保障」
●有識者の主な意見(抜粋)
・アメリカは、格差がOECD30か国中4番目に大きい。1960年代から
2000年代に格差が非常に大きくなり、特に1990年代以降の格差の
拡大が大きい。所得5分位の1番所得が高いグループの所得が飛躍
的に伸びている一方、下の3つのグループは殆ど変化がない状況が
続いている。つまり、所得格差が拡大しているのは、富裕層がますます
富裕になっているからであると言える。また、アメリカは貧困率もOECD
で3番目と高い。高齢者、子ども共に高く、特に子どもは5人に1人と
危機的な状況。
・フランスでいう社会保障は、非常に狭い概念で、医療や年金などの
社会保険、家族給付、労災補償を指す場合が多い。我が国における
社会保障に対応する、社会扶助、介護手当、失業保険等を含めた
概念は、社会保護という。
・我が国の社会保障制度が国家対国民という二当事者関係として
理解されがちなのに対して、フランスの社会保障制度は、国家の
ほかに補足制度の存立基盤とも言える社会というものが存在し、
さらに3番目の当事者として、社会構成員としての国民がいると
いう三当事者関係から成立していることが重層的かつ多様な制度
構造を可能にしているのではないか。
●主な質疑内容
(1)格差と貧困についてアメリカ独自の自己責任論によって
容認している節があるという話があったが、日本において
は自己責任論をどこまで問うべきか。それとももっと社会
構造の問題に切り込む必要があるか否か。
(2)学歴による格差との発言があったが、これはフランスで
は自己責任と捉えられているのか。
(3)格差が民主主義の仕組みを脅かすとの指摘について、
例えば2年まえの参院選の投票率を概観すると、高年齢
者層ほど投票率が高く、若い世代ほど低い。政治参加を
していかなければならない若い世代、そして子どもの貧困
に対して焦点が当たりにくいのではないか。
(4)生活保護を本来受けられる人が受けられていない
漏給問題は、フランスにおいても問題として捉えら
れているのか否か。