吉川さおり 参議院議員(全国比例)

活動記録

地域主権調査会 2010年11月16日

2010年11月16日

地域主権調査会では、主に以下の
2点について議論が大詰めを迎えています。

(1)一括交付金の在り方に関する提言
(2)出先機関改革に関する提言

私自身の大きな関心事は、(2)出先機関
改革について、です。前提として、出先機関
改革の方向性は、基本的に出先機関の原則
廃止が掲げられており、この方向性自体に
関しては、何ら異論を唱えるものではありません。

問題なのは、この中に都道府県労働局
(ハローワーク)が含まれていることです。

また、この日の調査会で他の箇所の提言に
ついては全て文言が明記され、言及されていた
にも関わらず、都道府県労働局の該当箇所には、
(P)の記述のみとなっていました。

これは、ペンディングとされ、後日記載される
ことを意味しています。

もちろん、前述したとおり、出先機関の原則
廃止について、何ら異論を唱えるものでは
ありません。また、地方分権を進める民主党に
とって、必要なことだと感じている一人でもあります。

ただ、雇用対策、つまり雇用のセーフティネット
整備は、国が主導でやるべきだと実感している
立場から、都道府県労働局を地方移管対象に
すべきではないと、断言します。

都道府県労働局を地方移管することは、
国際条約にも抵触することとなりますし、
法的整備も間に合わないままの見切り
発車ともなってしまうからです。

これでは、求職者の立場に立った改革とは言えません。

出先機関の地方移管という政策目的には
合致しても、心から職を求めている人に
とって、光の当たる改革であるとは言えません。

ここで、詳細を記述すると相当長くなって
しまいますので避けたいと思いますが、

もし仮に地方移管するのであれば、同時に
財政責任をも移行しないと、雇用保険の
濫給に繋がりかねません。

現在検討されている提言内容では、
都道府県労働局(ハローワーク)運営は、都道府県、
雇用保険の財政運営は、国が負うことになります。

つまり、窓口での対応(雇用保険給付の決定等)は
都道府県でなされ、最終的な給付は国のお財布から
という形になると、財政規律が働かなくなる恐れがあり、
濫給に繋がってしまう、という構図です。

事実、諸外国では上記の例が現存しており、
わが国としては、これを教訓にしなければなりません。

逆に言えば、財政責任と運営責任を一体的に
移管するのであれば、都道府県移管は可能で
あると考えます。ただし、国の指揮命令が行き届く
体制を構築する必要はあります。

また、私は2008年12月に議員立法で
「緊急雇用対策4法案」の法案提出者として、
内定取り消しが横行した2年前、これを
少しでも防ぐための法案を提出し、衆参
それぞれの厚生労働委員会での答弁に臨みました。

政権交代前でしたので、参議院では
可決して頂いたものの、衆議院では
審議の上、否決されました。

ただ、重要性は当時の政府も認識して
もらうことができ、その後、厚生労働省から
安易な内定取り消しは許さない、という
観点から根拠法の改正施行等がなされました。

これにより、各都道府県労働局は、採用を行う
(行おうとする)企業に対して、内定取り消しが
労働契約法に違反すること、あってはならない
こととして、悪質な企業名の公表など、強い
指導をするに至りました。

これは、雇用対策法と職業安定法に基づき、
国の権限で各企業に対して指導を行えるものです。

仮に、これらの法律改正を行わないまま、
都道府県労働局の地方移管を行ってしまった
場合、企業に対する指導権限は都道府県には
与えられていないがゆえ、例えば悪質な内定
取り消しが行われていようとも、迅速な指導は
出来ないこととなってしまいます。

また、現在の求職活動は県境をまたいだ形で
広範に行われているのが一般的であるため、地方
移管してしまうと、求職・求人双方にとって広い
情報が取れなくなる(つまり、都道府県での情報の
抱え込み等が発生する)恐れが大いにあります。

本当に、誰のための改革なのか、今一度
原点に立ち返って議論を行う必要があると思います。

私自身が、今その再来と言われている就職
氷河期世代の人間だからこそ、その時期に
就職活動を経験したからこそ、就職に関わる
情報は多い方が良いことを実感しています。

また、就職活動の前年に企業倒産等による
多くの内定取り消しが発生し、そんな先輩方の
姿を目の当たりにした経験を持っています。

今また就職氷河期の再来と言われる現状に
鑑み、弱い立場に置かれている求職者の、
そして未来ある学生・生徒の将来を閉ざさない
ためにも、地方移管するのであれば、せめて、
先に関連する法律改正をしなければ誰のための
改革か、全く分からないものとなってしまうことに
ついて、強く訴えたいと思います。

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