吉川さおり 参議院議員(全国比例)

活動記録

政治倫理審査会審査申立て(2024年2月21日)

2024年2月21日

2月21日、参議院政治倫理審査会規程第1条及び第2条の規定に基づき、野党4党の政治倫理審査会委員5名で参院議員32名の審査申立てを政治倫理審査会会長に対して行いました。

1985(昭和60)年に参議院政治倫理審査会が設置されて以降、初めてのこととなります。

私は、昨年秋の臨時会から2回目の経済産業委員長の任を終え、所属委員会は総務委員会に戻るとともに、議院運営委員会(筆頭理事)、政治倫理審査会(幹事)となっていましたが、昨年10月に所属委員会の配置が決まった際、政治倫理審査会が動くような事態になるとはよもや思いもしませんでした。

政治倫理審査会はロッキード事件を契機として、政治倫理の確立のため、国会法が改正され、新たに設置されることとなった審査会であり、設置の際の議論を見ても、期数の多い議員が幹事や委員を務めていたこともあり、会派では4期目前半の蓮舫議員と3期目後半の私が昨年10月からの配置となっていました。

ただ、政倫審が動くような事態はまったく想定されていませんでしたし、仮にも動くことが想定されていたとすれば、議運理事との兼任はとても大変なことですので私は配置されていなかったと思います。

そもそも滅多なことで政倫審が動くことがあってはなりませんし、実際に参議院政倫審は「会長の辞任及び補欠選任の件」や「幹事補欠選任の件」といった手続以外の開会実績はありません。

なお、私は、昨年秋の臨時会召集日である2023(令和5)年10月20日の政治倫理審査会において、幹事に選任されています。

昨年末から今日にいたるまで、自民党を取り巻く政治資金規正法違反が大きな問題となっており、参議院政治倫理審査会規程に照らせば、今回の事案は国会の自浄作用を発揮させるためにも取り上げざるを得ない事案であることは明白です。

参議院政治倫理審査会規程第1条は、以下のように規定しています。

「第1条 政治倫理審査会(以下「審査会」という。)は、政治倫理の確立のため、審査会の委員の申立て又は議員の申出に基づき、議員が行為規範その他の政治倫理の確立に資するものとして議長が定める法令(以下「行為規範等」という。)の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認められるかどうかについて、これを審査するものとする。」

では、議長が定める法令とは何でしょうか。3つあり、次に掲げる法令です。

〇行為規範、〇政治資金規正法、〇国会議員の資産公開法
(参院政倫審規程第1条に規定する議長が定める法令を定めるの件/平成5年3月12日決定)

行為規範についてはその第1条が、「議員は、職務に関して廉潔を保持し、いやしくも公正を疑わせるような行為をしてはならない。」としていることから、ややもすれば解釈によってその範囲が広がりかねない懸念もありますが、今回の事案は、派閥からのキックバックがあったにもかかわらず、それを集団的・組織的に政治資金収支報告書に記載しなかった不記載等であり、政治資金規正法に明らかに違反する行為です。

ただし、参議院の政治倫理審査会において、審査の実績はゼロであることから、慎重に要件を検討し、今後の濫用を防ぐ意味でも自民党の調査結果を待ちました。

自民党の調査結果では、歴史と伝統ある公党自身が「還付金等」という言葉を用いながらも、複数年にわたって政治資金収支報告書への不記載等があったことを認め、それが集団的・組織的に行われていたことが明るみとなったのです。

これらの行為が複数年、かつ集団的・組織的に行われていた事実が明確となった以上、規程の議長が定める法令である政治資金規正法に著しく違反しており、参議院として見過ごすわけにはいきません。

政治倫理審査会は司法の場ではありませんので、法的責任を問う場ではありません。また、懲罰委員会ではありませんので、議員の身分にかかわることを決める場でもありません。

政治倫理審査会は、規程第1条が定めるように「議長が定める法令に著しく違反している」ことに関し、「政治的道義的に責任があると認められるかどうか」について審査する場です。

だからこそ、国会自身が問題を明らかにすることは国会に課せられた使命のひとつであり、事実を明らかにすることこそが政治への信頼を取り戻すための第一歩と考えます。

32名の議員の中には、立場上抗えなかった方も多くおられるのではないかと思います。その仕組みが問題であり、その仕組みや構造の問題を明らかにしなければ、その先の政治改革はありません。

これら事実を明らかにするためには、自民党調査結果の不記載等があった議員全員を対象にする必要がありました。誰をあげつらうとかではなく、事実を明らかにすることを参議院が率先して行うことで、政治の信頼回復につなげたいと思います。

今回の申立てにあたって、衆議院の過去9回の審査会において何が明らかとなり、何が問題であるかについて、会議録が公開資料ではない以上、新聞記事にあたるほかありませんでしたが、入手できたものについてはすべて目を通しました。

政治倫理審査会が設置される際、設置されればロッキード事件に関与した議員が申立てにより審査会に呼ばれることも想定されたためか、その規程が骨抜きと称されていることも重々承知の上ですが、政治倫理審査会が設置されている以上、また、今回の事案が議長が定める法令に、どのように厳格な解釈をしたとしてもこれに著しく違反していることが明確である以上、この審査会を少しでも機能させる努力をするしかないのです。

参議院では初例となりますので、ひとつひとつ丁寧に冷静な議論を積み上げることによって、後に残す例としたいと思いますし、困難であるとはいえ、実態解明に少しでも近づくようにできればと思います。

ただ、このような形で政治倫理審査会を動かさざるを得なくなってしまったこと、審査の申立てをせざるを得なかったことは断腸の思いです。

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