吉川さおり 参議院議員(全国比例)
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コラム

NTT関連法いまむかし②

2025年5月24日

-NTT法、電気通信事業法、電波法の改正回数-

法律には、公布の際に、暦年ごとの番号が付けられます。 これを法律番号といい、NTT法は昭和59年法律第85号、電気通信事業法は昭和59年法律第86号、電波法は昭和25年法律第131号といった具合です。それぞれの法制定以降、NTT法改正案が8回、電気通信事業法改正案が19回、電波法改正案が46回成立しています。

主要な改正内容については次回以降で触れたいと思いますが、最高法規たる憲法は「通信の秘密」を規定しており、今回は通信の秘密と電気通信事業法の関係について見てみたいと思います。

-通信の秘密の保護-

憲法第21条は、通信の秘密の保護について第2項後段で規定しています。通信の秘密の保護には、国民が安全・安心に通信を利用できるよう通信制度を保障することにより、国民の通信の自由を保障することにあると考えられています。例えば、2022年6月10日の参議院総務委員会では次のようなやり取りがあります。

〇吉川沙織
「憲法が定める通信の秘密と電気通信事業法4条の関係、相違点について伺う」

〇総務大臣
「通信の秘密は、個人の私生活の自由やプライバシーを保護するとともに、通信が人間の社会生活にとって必要不可欠なコミュニケーションの手段であることから、憲法上の基本的人権の一つとして憲法21条第2項において保護されている。憲法における通信の秘密は、手紙、はがき、電報、電話など全てのコミュニケーションの手段を対象としているが、電気通信事業法における通信の秘密は、電気通信事業者の取扱中に係るものを対象としている。」

-電気通信事業法における規定-

電気通信事業法第4条第1項は、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」と定めています。

この規定は、これによって電気通信事業者を含めて何人からも通信がみだりに侵害されないよう利用者の通信を保護し、もって利用者が安心して通信を利用できるようにすることで、表現の自由や知る権利を保護するとともに、電気通信ネットワークや通信制度そのものへの利用者の信頼を確保し、電気通信の健全な発展と国民の利便の確保を図るという意義も有しています。

なお、保護される通信の秘密の範囲についても2022年6月10日の参議院総務委員会で、次のようなやり取りがあります。

〇総務大臣
「吉川委員御指摘の電気通信事業法によって保護される通信の秘密の範囲には、個別の通信に関する内容のほか、通信の日時、場所、通信当事者の氏名など、これらの事項を知られることによって通信の内容を推測されるような事項全てが含まれる。」

-通信の秘密の侵害行為-

通信の秘密の侵害行為には、
①知得(ちとく)「積極的に通信の秘密を知ろうとする意思のもとで知ること」、
②窃用(せつよう)「発信者又は受信者の意思に反して利用すること」、
③漏えい「他人が知り得る状態に置くこと」
の3類型があるとされています。

電気通信事業に従事する者には、電気通信事業法第179条第2項において、通信の秘密の侵害行為について罰則が科されています。また、業務の方法に関し、通信の秘密の確保に支障があるときには、同法第29条第1項第1号において、総務大臣が業務の改善を命ずることができることとされています。

なお、NTTはその長い歴史の中において、一度だけ電気通信事業法に基づく業務改善命令を受けたことがあります。2009年8月から10月にかけて他の事業者への電話番号移転に関する情報を不適切に取り扱った事案に関連して、2010年2月にこれを受けたものですが、この事案も影響して2011年のNTT法改正においては営設(営業・設備)分離を余儀なくされました。

このように、憲法、NTT法、電気通信事業法は、事業と雇用と働き方に密接に関係しているのです。

[参考条文]
◎日本国憲法
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。 通信の秘密は、これを侵してはならない。

◎電気通信事業法(昭和59年法律第86号)
(秘密の保護)
第4条 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。
(業務の改善命令)
第29条 総務大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、電気通信事業者に対し、利用者の利益又は公共の利益を確保するために必要な限度において、業務の方法の改善その他の 措置をとるべきことを命ずることができる。
十二 前各号に掲げるもののほか、電気通信事業者の事業の運営が適正かつ合理的でないため、電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがあるとき。