政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(2021年5月12日)
政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会で40分の質疑に立ちました。
4月20日の総務委員会の質疑冒頭でも事実確認を行いましたが、罰則にかかる条文誤りが判明した自民党会派が4月23日に提出した公職選挙法の一部を改正する法律案の質疑です。
2018(平成30)年6月に自民党会派が提出した公選法改正案は、参議院議員定数増と特定枠制度の導入をするものであり、野党各会派から大反対が巻き起こる中、数の力で強引に成立したものです。
今般、罰則にかかる条文誤りが発覚したため、2015(平成27)年改正公選法における誤りと併せてこれを正すのが、4月23日の自民党会派が提出した改正公選法の内容です。
まず、参議院法制局に4月20日の総務委での質疑以外の事実確認を幾つか行った後、内規にみる再発防止策の在り方と改善点について確認を行いました。
たとえば、条文誤りを把握した時点で参議院法制局に、立案作業を行った法律案に誤りが生じたことが発覚した場合の情報共有や報告体制等の対応手順があったのかを問うと、組織として定めていなかったことが明らかになりました。
ただ、本件を法制局の組織として把握するに至った2020(令和2)年2月以降は、条文作成の際のチェック項目や、点検する際の手順を整理するなどし、6月には誤りが生じた場合の対応についての内規をとりまとめていました。
立案作業は無謬性を求めすぎると職員に過度な負担となることから、チェック体制を整備する必要はあるものの、誤りが生じてしまった場合の対応をいかに適切に行うかが問われるか、との観点で現在の記述で改善できるのではないかという幾つかの点について法制局長とやりとりし、改善に向けて答弁が得られました。
次に、本件誤りについて、法制局はあくまで立法補佐機関であり、一義的に責任を負うのは法律案の提出会派たる自民党にあることは論をまたないことから、国会議員の権能として発議した法案である以上、誤りが生じたことの責めは、議案を発議した国会議員が当然負うものであって、法制局に責任を転嫁するかのごとき姿勢が見られるのであれば、看過し難いことを指摘しました。
また、本件誤りが発議者議員への報告が直ちに行われなかったことについて、報告を行えなかった政治的環境についても指摘し、発議者の見解を求めました。
[当時の法案成立経緯]
〇参倫理選挙特委には5つの公選法改正案が付託(自民案、公明案、野党案3案の計5案)
〇うち、公明案については先行して採決され、否決
残る4案:さらなる審議を求める声、委員会審議の状況を議長に一旦報告すべきなどの声
〇しかしながら、自民出身の倫理選挙特委員長はこれを無視。自民党から、自民案のみ質疑終局、討論を省略、直ちに採決することの動議が提出され、数の力で一方的に委員会で可決。
〇本会議では、討論権を持つすべての野党会派が自民案に反対討論を行ったが、数の力で可決・成立。
このように、政治的に極めて大きな問題がある中で、定数増と特定枠導入の法律が成立した経緯があるため、その法律に誤りがあったとなると、法制局としてはさらなる政治的問題に発展しかねないことを懸念して、直ちに報告することがためらわれ、抱え込んでしまったのではないか、報告をためらわせるような政治的環境を生み出したことについての見解を求めました。
次に問題視したのは、当時、立案作業を依頼したタイミングです。
参議院改革協議会の下に設置された選挙制度に関する専門委員会は、1年間17回にわたり、各会派が真摯な議論を重ね、最終的に2018(平成30)年5月9日に参議院改革協議会で専門委員会の報告聴取を行っています。
その翌月、6月1日に選挙制度専門委でまったく議論もしなかった案(定数増+特定枠)が自民党から参議院改革協議会で突如示されたのですが、今回の質疑で、この案の立案作業を法制局に依頼したのが、5月14日であったことが明らかになりました。
つまり、5月9日に専門委の報告を参改協で行っておきながら、その5日後の5月14日には、そこでまったく議論されていない案について立案作業依頼を裏でこっそり行い、6月1日に定数増と特定枠の案を突如出してきたことになるのです。
約1年かけて積み重ねてきた専門委での議論を尊重した案ならまだしも、議論とはまったく無関係の内容を。
今般、平成30年改正公選法の条文誤りが発覚した流れで、はからずも法案作成を依頼した日付が明らかにされることになりましたが、当時の合意形成の進め方には、やはり問題があったということが改めて明らかとなりました。
最後に、2018(平成30)年当時の委員会質疑において、定数増について当時の発議者たる自民党議員からいくつか気になる答弁があったことについて見解を問いました。
そのひとつが、議員定数増により、参議院の権能や役割がどう変わるのか、について参議院の行政監視機能強化が何度も挙げられていました。
よって、当時の自民党議員が答弁した議員定数の増加による行政監視機能強化が、現状において本当に進展していると考えているのか、また、実際にどのような成果を上げているのかについて問いました。
率直に指摘して、当時の発議者答弁とはほど遠いのが現状です。
私は、2期目最後の委員会質疑が行政監視委員会。3期目最初の常任委員会の質疑が行政監視委員会で、昨年(2020年)の今頃は行政監視委員会の理事として、委員会運営にも携わっていました。
平成30年改正公選法の審議時、当時の自民党発議者は、
「通年で行政監視委員会を開催する」
「閉会中を有効に活用して年間の行政監視サイクルをつくる」
「小委員会というものを幾つか設けて、テーマを設定して一つ一つ取り組んでいく」
などと繰り返し答弁していますし、何より2018(平成30)年6月1日の参議院改革協議会報告書にもその旨明記されています。
もちろん、この報告書が取りまとめられる以前に比べれば、少しは改善されたかもしれません。しかし、当時の発議者答弁で繰り返された上記の点については、まったく実現していませんし、実現させようとの気概も感じられません。
行政監視機能は、与党か野党かは関係なく、立法府として果たすべき責務です。
行政監視委員会設置の原点に立ち返り、行政監視機能の強化を参議院の活動の柱とすると各会派間で合意した参議院改革協議会報告書は、国民に対する参議院の意思表示だと思います。引き続き、あきらめずに報告書の具現化に向けて取り組んでいきたいと思います。
[質疑項目(公選法改正案・自民発議)]
1.平成30年改正公選法についての事実確認と再発防止策[参議院法制局]
・法制局として条文誤りを把握した時期と発議者等への報告有無
・誤りを把握した時点での法制局における対応方針等の有無
・内規にみる再発防止策の在り方と改善点
・参議院事務局との連携必要性と法改正時の報告の在り方
2.条文誤りに関する発議者としての認識[発議者]
・提出会派としての責任に対する認識
・法制局が直ちに発議者に報告を行えなかった理由
3.立案作業依頼の時期と参改協との関係[発議者]
・平成30年改正公選法の立案作業を法制局に依頼した日付
・立案作業の時期と参改協との関係性
・本件誤りを踏まえ会派の体制を整える方針の有無
4.議員定数増と行政監視機能強化との関連性と評価・成果[発議者]
・行政監視機能強化についての評価・成果
・平成30年6月1日報告書とこの3年間の実情との齟齬についての見解
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