委員派遣(地方公聴会)と派遣委員の報告
○参議院委員会先例録280
派遣委員は、調査の結果について報告する
派遣委員は、その調査の結果について、口頭又は文書をもって委員会に報告する。なお、常任委員会において閉会中に調査のため派遣された委員が、次の国会において報告した例がある。
先例により、委員派遣を行ったときは、委員会において、派遣委員が派遣の結果について口頭報告を行うこととされています。
さらには、昭和60年代の参議院議院運営委員会理事会にて、委員派遣の結果を受け、政府に対して質疑を行い、委員派遣の成果を国政に反映させ、立法等に資することが申し合わされています。
安保法案を審議する参議院特別委員会は、9月16日午後、横浜で委員派遣(地方公聴会)を行いました。
当初は、横浜から国会に戻り、同日18時から特別委員会を与野党の合意なきまま開会する予定でしたので、その場合は、数時間で派遣委員報告を作成せねばなりませんでした。
結果として、野党の抵抗により、委員派遣(地方公聴会)と委員会の同日開会という事態は避けられたものの、採決が強行されるまでに、委員派遣(地方公聴会)の結果が報告されることはありませんでした。
本来、安保法案採決までの間に、特別委員会を開会して、(1)派遣委員の報告を聴取すること、(2)公聴会と併せて委員派遣の成果を質疑に活かすことが必要でした。
しかしながら、翌17日に採決が強行されてしまったことにより、派遣委員の報告聴取はおろか、公聴会と委員派遣(地方公聴会)後は、質疑のひとつも行われていないのです。
どうやら、9月17日の参議院特別委員会の会議録末尾に、委員派遣(地方公聴会)の現地における会議の記録を全文掲載するようですが、衆議院は、派遣委員の報告を2班の代表者それぞれから聴取したうえで、現地における会議の記録を全文掲載しています。

平成27年7月8日 衆議院特別委員会議録(抜粋)
参考までに、衆議院の特別委員会においては、平成27年7月6日に2班に分けて、沖縄県と埼玉県に委員派遣(地方公聴会)を行い、委員派遣(地方公聴会)の報告聴取は、平成27年7月8日の衆議院特別委員会において行われました。
さらに、衆議院は、公聴会と委員派遣(地方公聴会)後に、これらの結果を活かした質疑を行っているのです。
委員派遣(地方公聴会)の報告を聴取せず、公聴会と委員派遣(地方公聴会)後に質疑のひとつも行わず、採決後、事後的に現地の記録だけを掲載することで済ませようとする参議院は、果たして、良識の府といえるのでしょうか。
