吉川さおり 参議院議員(全国比例)
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議会雑感

日本国憲法における三権分立

2015年5月3日

○日本国憲法第41条(国会の地位・立法権)

国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

○日本国憲法第65条(行政権)

行政権は、内閣に属する。

○日本国憲法第76条(司法権)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

5月3日は、憲法記念日です。このブログでは、今のところ、個別の政策の是非については触れないことにしていますので、憲法改正問題等については言及しません。

ただ、日本国憲法を取り巻く事実は概観してみたいと思うのです。

今回は、日本国憲法における三権分立を見てみます。

三権のそれぞれの他機関への抑止について、権力分立の典型例といえるのが三権分立ですが、上述の日本国憲法の規定は、国家権力である立法権、行政権、司法権の所在を明記しています。

立法権は国会に、行政権は内閣に、司法権は裁判所に属すると規定し、それぞれ別個の独立機関に専属させています。三権を別個の独立機関に専属させ、互いの抑制と均衡によって、権力の集中と濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとしているのです。
             

国会(立法権)と内閣(行政権)の関係でいえば、内閣総理大臣は、日本国憲法第67条の規定により、国会議員の中から国会の議決で選ばれますし、国会は、内閣に対して内閣不信任を提出することができ、これが可決されると、日本国憲法第69条の規定により、内閣は総辞職となります。

内閣は、国会から内閣不信任を可決されたら総辞職しなければなりませんが、一方で、衆議院を解散に追い込む権限があります。つまり、国会(立法権)と内閣(行政権)の関係は、お互いに牽制し合い、権力の暴走に歯止めをかけられるようになっているのです。

他方で、国会(立法権)と内閣(行政権)の関係は、抑制と均衡状態であるものの、議院内閣制をとる我が国にとって、日本国憲法第66条3項のとおり、近い関係でもあります。

ただ、国会は、主権者である国民から直接選ばれた議員で構成されるため、三権の中で、国民の意思を最もよく反映している機関であるからこそ、国の立法はすべて国会の議決で成立するのです。

国家権力を作用毎に3つの機関に分けて分離し、それぞれを抑制と均衡状態にすることによって、国民の権利と自由を保障する制度が三権分立であることを考えると、日本時間の4月30日未明、内閣総理大臣がアメリカ議会上下両院の合同会議で行った演説の一部は、国会に身を置く議会人のひとりとして、何とも言えない気持ちになるのです。

「そのために必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現します。」(抜粋)

内閣提出法案は、内閣(行政権)から国会(立法権)に提出された後、所定の手続きを経て、初めて審議が始まります。ただ、演説に関連する法案は、演説時点で、立法府である国会に提出すらされていません。

国権の最高機関たる国会(立法権)の運びについては、日本国憲法第58条の規定により、両議院の議院規則や国会法が定めています。これらは、国会の委員長が、委員会の議事を整理し、秩序を保持するとしており、行政権の長である内閣総理大臣が法案審議の運びを差配できるわけではないのです。

もちろん、現在の国会における与党と野党の数の歴然たる差を見れば、そう表現したくなる気持ちも分からないではありません。

ただ、国会(立法権)と内閣(行政権)の関係にいくら近い側面があろうとも、三権分立の観点に立てば、国会に提出すらされていない法案について、行政権の長が成立時期まで国外で断言することには違和感を覚えてしまい、何とも言えない気持ちになってしまったのです。

私は、議会人のひとりであることに誇りを持っています。