海底ケーブル敷設船「きずな」視察報告①
経済安全保障の観点からも昨今報道も多く、昨日の参院総務委の質疑でも取り上げられた「海底ケーブル」を取り巻く情勢について、海底ケーブル敷設船「きずな」の視察を踏まえ、数回に分けて報告します。
今回は、「日本のリスク」と「経済安全保障と海底ケーブル」についてです。
──────────────────
日本のリスク
──────────────────
海底ケーブルは、日本の国際通信の99%が海底ケーブルを経由していることや経済安全保障の観点からも非常に重要です。
衛星で代替すればよいのではないかとの意見もありますが、現在の技術では大容量通信において光ファイバーには遠く及ばず、伝送距離の問題から遅延が大きいことにより、海底ケーブルが重要となります。 このような理由から海底ケーブルシステムの安全性を確保する必要がありますが、その根幹の一つである陸揚げ局が地域的に集中しており、その防御についても国家として取り組む必要性があります。
──────────────────
経済安全保障と海底ケーブル
──────────────────
なお、ケーブル故障事象の約8割が漁業活動(底引き網等)、船の錨による損傷等の人為的要因とされていますが、2023年2月に台湾海峡で海底ケーブルが2か所切断、また2025年2月にも同様の事象が発生しています。
これらについては、「切れた」のか、「切られた」のか、どこまで意図的かは断定できないものの、2025年の事象についてはトーゴ船籍の船が中国人船長による指示でジグザグに航行しており、台湾の電信管理法違反に問われましたが、船長本人は否認している状況にあります。
また、海底ケーブル敷設を通じた国家間の代理戦争ともいえる状況ともなっています。特に注目される事例として、東南アジアと欧州を結ぶ国際海底ケーブルの入札案件があげられます。 この事例では米国企業と中国企業がそれぞれの国家の戦略「代行者」としてふるまっているように見えます。
一方、日本はこれらの状況から2、3周遅れており、豊富な資金と生成する膨大なトラフィックを武器に、ハイパースケーラー(Google等)が国際海底ケーブル敷設のメインプレーヤーになっていることから、従来の通信キャリアは新たな利用形態を模索しつつ、付加価値の高いサービスを提供することで稼いでいく必要があります。
