失われた30年(2022年3月19日掲載分)
最近、2024年物流危機の問題がよく取り上げられるようになってきた。
昨年3月のコラムで、学生時代のヤマト運輸での早朝アシスト勤務時代の経験から、今後の物流の在り方について思ったところを書いた。再掲して、改めて物流問題について考えてみたいと思う。
「人口減少、少子高齢化が一層進む中、これまでのように便利さを享受するだけではなく、たとえば皆で少しずつ不便さを受け入れる、実際のコストはコストとして共通認識を醸成していくこと等が必要なときにきているのではないだろうか。」
〔2022年3月19日掲載〕
年度末に関連して、もうひとつずっと気になっていることを書いてみたい。
私の学部時代の4年間に、日本育英会・第一種奨学金と早朝週6日の荷物の仕分けと積み込みのアルバイトの存在は欠かせなかった。早朝アシストとしてお世話になったヤマト運輸の皆様には感謝しかない。
早朝アシストの経験は、労働基準法による女性の深夜労働制限とのかかわりもあり、法律と政治の関係性を実感する側面もあったことを選挙に初めて挑戦した2007年のコラムでも書いたところである。
普段の週6日のシフトは6時~8時なのだが、繁忙期は5時~8時のシフトとなり、5時からのシフトの時は、労基法との関係で女性は5時より前にタイムカードを打つことができなかったのだ(1999年4月改正施行され今は女性も5時より前でも可)。
その繁忙期は、お中元とお歳暮、年度末の時期であり、年間に占める割合はそれなりだった。
私が4年間お世話になった営業所の現場は、屋根だけあってあとは吹きっさらしだったため、冬はとにかく寒かった。
荷物は重くて多いし、住所はちゃんと覚えなきゃいけないし、積み込みのテクニックも必要だし、男性でも3日とか1週間で辞めていく人が多かったのも頷ける環境ではあった。
あと、5時よりも夜明け直前の7時少し前がとくに冷えた。ただ、寒ければ寒いほど、凛とした空気と太陽が顔を出したあと、少しだけ暖かくなるあの感覚は忘れられない。だから今でもしんどい時があると、夜明け前が一番しんどいんだ、そう思うようにしている。
私がお世話になった頃から、宅配サービスは顧客至上主義というかサービス過剰競争とでもいう状態になっていったように思う。
私がヤマト運輸でお世話になった4年間は、1995年5月から大学卒業直前の1999年2月なのだが、この間だけでも多くのサービスがリリースされた時期とも重複する。
たとえば、
1996年 365日間営業開始
1997年 宅急便の全国ネットワーク完成、「クロネコメール便」発売
1998年 「時間帯お届けサービス」開始、「往復宅急便」発売
(参考:1992年 「宅急便タイムサービス」発売)
という具合である。
現場で仕分けをして、それぞれのトラックに積み込む際、時間帯サービスが本格的に出てきてからは工夫が必要だったし、SD(セールスドライバー)さんがとても苦労していたことを覚えている。
今は当たり前のサービスになってしまった時間指定。
当時からあったことだが、時間指定通りにお客様に荷物を届けても不在のことが多く、翌朝持ち戻りの伝票を何度見たことか。
現在、ネット通販による宅配便の取扱個数は急伸しており、再配達の削減は急務である。
また、見かけるたびにつらくなるのが、「送料無料」とうたっている広告の存在だ。
「送料無料」となっている場合にも、配送については実際にはコストが発生している。また、再配達等1回で受け取れなければ、二酸化炭素排出量の増加や労働生産性の低下による社会的損失も発生しているのだ。
「送料無料」ではなく、せめて「送料弊社負担」「送料別」にできないものだろうかと思う。
人口減少、少子高齢社会が一層進む中、これまでのように便利さを享受するだけではなく、たとえば皆で少しずつ不便さを受け入れる、実際のコストはコストとして共通認識を醸成していくこと等が必要なときにきているのではないだろうか。
こんな時代で今のような状況だからこそ、とくにそう思う。
世代によって感覚が違うことかもしれないが、我が国日本はかつてのように人口が増え、昭和のような経済成長は望めないことを強く認識すべきだ。
昭和の経済成長モデルよ再び、と間違った前提の下で施策が行われた結果が平成の「失われた30年」なのだから。
不都合な事実を覆い隠すことなく直視し、将来世代に先送りすることなく、対処する。これらを愚直に説明し、理解を得つつ、政策を前に進めることこそが本来の政治の役割ではなかろうか。
私はそういう政治をしたいと思う。だから、今はもどかしい。
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