総務委員会(2024年5月16日)
総務委員会で25分の質疑に立ちました。
今回の議題は、放送法の一部を改正する法律案でした。
今回の改正の中心は、これまでNHKが行うインターネット配信業務は、いわゆる任意業務に分類されていましたが、そのうちの放送番組等についてはこれを必須業務に位置付けること、受信料の締結義務の対象に一定の操作を行い、配信の受信を開始した者を加えること等、ある意味、放送法やNHKにとって分水嶺となる改正ではないかと考えています。
この考えにも立ち、放送法は昭和25年制定法ですが、占領下時代に議論され、制定された放送法の制定を巡る経緯について少し解き明かすところから始めました。2016(平成28)年に初めて議運理事に就いて以降、会議録問題は後世への検証の観点からも重要視しているテーマですが、これに関連して研究の基礎資料を集める段階で初期国会の会議録を調べているうちに、放送法の制定経緯が非常に不透明であることが気になっていたのです。
放送法の質疑に立つことが決まったのは急でしたが、予め調べていた事実に基づき早めに通告を出したところ、非常に意味のあること、私自身初めて知ったこと等、多くの気づきにも恵まれました。
詳細は会議録が確定稿になればそちらをご覧いただきたく存じますが、法の制定過程を辿る度、時代背景に思いを巡らせるとともに、様々なことを調べ、議論の経過が残っていること、敢えて残されていないことの意味を知ることは今後の国会での議論に活きると実感もするのです。
最初に法制定時の議論を確認した後は、今回の法改正の目的、放送法には全体の目的規定とNHKのみにかかる目的規程がありますので、その目的と責務、受信料制度の考え方、今次改正における省令委任の在り方について質疑を行いました。
放送法は、昭和25年に制定されて以降、全体にかかる目的規定である第1条は、その内容について改正されたことはなく、では今回のインターネット配信でもこれが達成されるのか否かについて大臣に見解を問い、その後はNHKのみにかかる目的規定である第15条の考え方について局長に問いました。
また、受信料制度に関しては、NHKを受信することのできる環境にある者に対し、広く公平に負担を求めるものですが、今回、受信できる環境にある(インターネット接続可能である)者すべて(受信したくない者も含む)に受信契約締結義務の対象とするのではなく、受信できる環境にある者のうち、受信を主体的に望む者のみを受信契約締結義務の対象とするのは、従来の受信料制度を大きな違いがあることとなりますので、この点、会議録に残しておいた方が良いと考え、敢えて長めに発言しています。
今回の改正は、第64条に従来の特定受信設備を設置した者に加え、特定必要的配信の受信を開始した者を加えようとしています。
従来の特定受信設備とは、テレビを設置した段階で受診契約を締結しなければならないとする条文です。つまり、テレビを設置すれば、NHKを見る見ないにかかわらず、受信契約を締結しなければなりませんでした。
今回の改正では、特定必要的配信を受信を開始した者として、スマホで一定の操作を行い、配信の受信を開始した者、つまり主体的・積極的にNHKを視聴しようとする意志のある者に対して締結義務の対象とする条文が加わることになります。
平成29年最高裁判決の判示は次の通りとされています。
「現実にNHKの放送を受信するか否かを問わず、受信設備を設置することにより放送を受信することのできる環境のある者に広く公平に負担を求めることにより、NHKが全体により支えられる事業者であるべきことを示すもの」
今回の改正で、受信するか否かを問わず受信することのできる環境にある者に広く負担を求めるのではなく、主体的・積極的に受信する者をその対象に加えようとすることは、全体により支えられる事業者であるNHKの性格や在り様をいずれ変えていくことになるのではないでしょうか。
これらについて、委員会においては今後のコンテンツの在り方も含め、もう少し具体的に指摘しましたが、今後の動向については立法府の立場から注視していきたいと考えています。
〔質疑項目(放送法の一部を改正する法律案)〕
1.法制定時の議論
・放送法制定時(昭和25年)より前の数年間の問題点
2.法改正の目的
・放送法の目的規定である第1条の改正有無
・放送法目的が今次改正によって変わらない理由
3.NHKの目的規定と責務
・法制定時のNHKに関する目的規定
・現在の光ファイバの世帯カバー率の実績
・光ファイバ整備が残された地域との「あまねく受信」の矛盾
4.受信料制度の考え方
5.今次改正における省令委任の在り方
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