吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

総務委員会(2024年5月28日)

2024年5月31日

総務委員会で30分の質疑に立ちました。

今回の議題は、「行政制度、地方行財政、選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査」、いわゆる一般質疑でした。

法案質疑とは異なり、総務行政全般にかかる議題について質疑を行うことができることになりますので、これまで継続的に取り上げている課題や最近問題になっている課題等について取り上げたいと考え、質問を組み立てました。

継続的に同じ問いを立てて、経年変化を見ることができるのは、解散がない参議院の良い面での特徴のひとつではないかと感じています。

私が継続的に国会質疑の場で確認している政策課題としては、主として、〇就職氷河期世代の問題、〇消防防災行政、〇立法府と行政府の在り方(束ね法案等)があります。

これらについて、継続的に同じ問いを立てることで問題の存在、進捗度合い等を客観的指標で確認することができるため、今回は、2年前の総務委員会で質問した就職氷河期世代の国税・地方税収入の課題から取り上げ、定額減税を巡る問題、税の性格と三原則、税優遇の問題も取り沙汰されている政治資金規正法の制定過程について取り上げました。

就職氷河期世代は、どれだけ懸命に活動をしても、採用の門戸が閉ざされていたり、大幅に狭められたりしたために、多くが思うような形で社会に出ていくことができなかった世代です。自己責任の名の下に、政治の光は当時一切当たりませんでした。

私は、運と縁と巡り合わせで会社員として社会に出ることができたことを強く自覚しているからこそ、多くの世代の方に問題の所在を理解していただくべく、社会保障制度の根幹にも関わる課題でもあるとして、2007年の初当選以来、一貫して取り組んできました。

就職氷河期世代が正社員になれなかったことによる経済的損失を正しく把握する必要性については、12年前の社会保障と税の一体改革特別委員会以降、税収に与える影響額について問うてきましたので、今回も国税と地方税の影響額について問うところからはじめました。

その次は、税に関連して、所得税法の省令委任で今般の定額減税の所得税分で給与明細に減税額を示す欄を義務付ける条文とその公布、施行期日、定額減税にかかる自治体の負担等について確認した後、税の性格と税の三原則について触れました。

定額減税については、省令改正は3月30日、施行は6月1日となっていますが、周知等は国税庁Webサイト等で1月30日から行われています。ただ、これだけ怨嗟ともいえる声が企業等から上がっていることは、周知が甘かった証左であり、企業にとって非常に重い負担になっていることに思いが足りていないのではないでしょうか。

総理は5月20日の党役員会で、「給与や賞与の支払時に減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要だ。給与明細へ明記されるようにするとともに、集中的な広報などで発信を強める」と発言した旨、報道されていたため、そもそも税とはどのようなものかを確認しました。

社会の構成員として、税を広く公平に分かち合って、社会を支えるものであり、税は一人ではなく、社会を作って共同生活を行う上で必要とされる経費を、その社会の構成員の間で分担する、いわば会費のような存在です。

支え合い、分かち合うための仕組みである税であるにもかかわらず、総理の「給与や賞与の支払時に減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要」との発言は、いわば税を「年貢」と捉えているようなものではないでしょうか。

なお、「定額減税の恩恵」という文言は、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定)の中に出てきますが、税の性格と原則(公平・中立・簡素)を見失わせることになってしまいます。

そして、税の三原則のひとつである「公平」性をも失わせかねない問題が、いわゆる還付金による税優遇報道も出ていますが、政治資金規正法に規定される収支報告書不記載等を巡る一連の事案です。

前回、5月16日の質疑で昭和25年制定法の放送法の制定過程について問うたところですので、政治資金規正法の制定過程について問うことで、改めてその意味を確認することとしました。

政治資金規正法の実質的な審査は衆参両院とも、小委員会で行われました。

ただし、その名称は審査の過程で変更されており、当初は「政党並びに選挙に関する腐敗防止法に関する小委員会」でしたが、審査途中で「政党及び選挙に関する小委員会」に名称が変更されたものです。

変更前の小委員会名から伺われるように、政治資金規正法は、政党・選挙の腐敗という議会制民主主義を脅かす現状に対し、立法府自らが襟を正し、国民の政治への信頼を回復するために制定された法律です。

どのような議論を経て法制定に至ったのか、経緯や法に定められた各規定が意図している趣旨について、現在の議員も理解を深めなければ法の趣旨は徹底されず、形骸化してしまうことから、今回は、主として当時の議論に関する記録が残されているかの観点から問いました。

〔質疑項目(行政制度、地方行財政、選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査)〕

1.就職氷河期世代が非正規雇用であることの国税・地方税に与える影響額

・就職氷河期世代が正社員になれなかったことによる現在の影響額

2.所得税法の省令委任事項

・所得減税で給与明細に減税額を示す欄を義務付ける条文
・改正省令の公布と施行日
・定額減税実施に伴う自治体の業務負担

3.税の原則と考え方

・税の性格と三原則
・現在の国及び地方の長期債務残高

4.政治資金規正法の制定過程

・政治資金規正法の制定過程
・参議院における小委員会での審査の過程
・政治資金規正法が「規制」ではなく「規正」とされた意味