吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

議院運営委員会(2021年4月1日)

2021年4月2日

議院運営委員会で質疑に立ちました。

現在(2021年4月1日)開会中の国会は、第204回国会(常会)です。

今次常会において、4月1日時点で国会に提出済みの内閣提出法律案は62本、条約が11本ですが、残念なことに条文案や関連資料に多数の誤りが次々と判明しています。また、参議院においてはこれらの報告が遅延する案件も複数発生しており、2月中旬の議院運営委員会理事会より本件について内閣からの報告聴取、ならびに協議を続けてきました。

結果として、「内閣提出議案の誤り等に関する件」として委員会冒頭に内閣官房長官から報告を聴取した後、質疑を行うこと、質疑後に政府への要請について議院運営委員長から読み上げることについて協議が調いましたので、この度の議院運営委員会の開会に至りました。

私は、5年以上前から内閣提出法律案の国会提出のあり方として、「束ね法案」や「包括委任規定」を問題として、議運理事会や本会議、各委員会等で繰り返し指摘してきたこともあり、今回の条文案の誤りについては二度と繰り返さないためにも委員会を開会して記録に残すべき、と議運理事会で当初から主張を続けてきましたので、10分の短い時間でしたが質疑に立ちました。

今回、問題となった誤り等については2種類に大別できます。

ひとつは条文案誤り(法律案そのもの)、ひとつは関連資料(新旧対照や参照条文)です。なぜ、これらが誤っていると問題なのかについては私の質疑の中でも、議運委員長の最後の発言でも触れていることですが、下記のとおりです。

〇法案は誤りのある内容で議決されてしまうと、国民の権利義務に重大な影響を及ぼし、また、国民生活、経済活動に混乱を招きかねないこと

〇関連資料については、複雑高度化した法案の内容の理解を助け、充実した国会審議を行ううえで欠かせないものであるとともに、国民への説明責任を果たす手段のひとつであること

官房長官には、これらの認識が合うか最初に問うたうえで、今回のような誤りを二度と繰り返さないためにも、全体像を把握し、後世に残す観点から、改めて事実関係を一つひとつ確認しました。

条文あるいは参考資料の誤りが判明したのは、法律案23本、条約1本に上ります。うち、条文に誤りがあった本数については、4本の法律案に上り、関連資料の誤りは22本の法律案について判明していますが、深刻なのは複数の条文案に誤りがあったことです。

事実、2月3日に成立した新型インフル特措法改正案に関しては、国民の権利を制限する条文での誤りであり、条文案に誤りがあることは絶対に避けねばなりません。

今回の議運委員会には、内閣法制局長官も出席していることから、内閣提出法律案の国会提出にあたり、条文案のチェックをしているか否か、改めて内閣法制局長官に確認したうえで、次に、いわゆる5点セットと呼ばれる国会提出関連資料を含めた形で、どこまでが内閣法制局の責任を持つものか、について問いました。

5点セットとは、国会審議において条文本体に付随する関連資料のことですが、(1)条文案、(2)提案理由説明、(3)要綱、(4)新旧対照、(5)参照条文です。法制局長官の答弁によると、(1)はもちろんそうですが、(2)理由まで責任を持つ範囲と判明したことは新たな発見でした。

今回深刻なのは、内閣法制局が責任を持つとされる条文案において誤りが見つかったことです。

ただ、条文等の誤りが判明したのは今次常会が初めてではありません。

過去の事案において検証を行い、重層的なチェックの対策を講ずるとされていても、今次常会の誤りの多発は、これら対策が機能していないことの証左です。また、誤り等が発生した際、参議院への報告が遅れるなどの事態も発生したことに鑑み、国会報告の統一的なルールの有無について官房長官に確認したところ、ないとの答弁でしたので、この際、統一的なルールを策定する必要性を指摘しました。

さらに、3月31日に初回会合を開いたとされる再発防止PTにおいては、既に活用されていた法令審査支援システムやe-LAWS等についての議論も行うようですが、誤り等を見逃すことになってしまった背景こそが問題の核心であることを指摘しました。

時間不足、人手不足、業務過多が解消されない限り、チェックをいくら重畳的に行ったとしても職員が疲弊していくばかりです。厚生労働省が2014年に同様の事案を起こした際にまとめた再発防止策のひとつに、「業務量に応じた必要な組織定員要求を行う」とされていたことを踏まえ、その後厚生労働大臣を務めた官房長官に見解を質し、新しい課題も出てきており、それに応じて必要な人員を確保していく必要性について答弁を得ました。

本件に関する政府の今後の対応についてはもちろん、これからも内閣提出法律案の国会提出のあり方については、行政監視の観点から注視し続けたいと思います。

[質疑項目(内閣提出議案の誤り等に関する件)]

1.議案等の誤りについての認識[官房長官]

・条文案と関連資料の正確性に対する認識

2.第204回国会における内閣提出法律案の本数と誤り等の本数[官房長官]

・今次通常国会に提出済み内閣提出法律案の件数
・条文案や関連資料に何らかの誤りがあった件数
・参議院側にのみ報告が遅れた件数

3.内閣法制局の審査体制[内閣法制局長官]

・内閣法制局における閣法条文チェック関与の有無
・内閣提出法律案の国会提出にあたっての法制局関与の範囲

4.国会報告のルール策定必要性と本質的課題に向き合う必要性[官房長官]

・条文案誤り等が発生した場合の国会報告ルールの有無
・誤り等を見逃すことになった本質的課題に向き合う必要性