議事妨害-その1
数の及ばない少数会派が、合法的に採決に抵抗する手段としては、主として次のようなものがあります。
当該法案を廃案に追い込めるかもしれない、多数会派から譲歩を見込めるかもしれない、との思いで行われることがほとんどです。ただ、いずれにしても、賛否両論あるのは事実です。
○先決事件である決議案等の提出による手法
・議長の不信任決議案、常任委員長の解任決議案の提出
→常任委員長は本会議で選任されるため、委員会限りで罷免できないため
[参考]
特別委員長の場合は、特別委員会で選任されているため、特別委員会の権限で不信任を取り扱います。
よって、本会議において特別委員長に対しては問責決議案となりますが、今回が12回目の提出でした。ちなみに、本会議で特別委員長の問責決議案が可決されたことはありません。先日紹介したとおり、特別委員会で不信任動議が可決されたことは、過去1度だけあります。
なお、仮に、本会議で特別委員長の問責決議が可決されても、直ちに解任されることはありません。
○手続きや処理に通常より時間をかける手法
・記名投票の要求
→処理に一定の時間がかけられることによる議事進行遅延行為
・フィリバスター
→長時間の討論等を行うことによる議事進行遅延行為
・牛歩=牛歩戦術
→投票までの間、立ち止まったり足踏みしたりしながら、ゆっくり前進し、時間稼ぎをする戦術
[参考]
帝国議会時代において、議事妨害の主流は、質疑者がその議題につき延々と長時間の発言を行い、審議の遅延を図る長時間演説であり、本会議で議員が次々に交代して長時間演説を行いました。
アメリカでも議事妨害が少数党の有効な戦術として行われており、審議の遅延を図るフィリバスターと呼ばれていますが、その主流は長時間演説です。アメリカでは、1人で24時間18分の発言を続けた記録も残っています。
最近の国会での議事妨害は、審議拒否や先決問題の提出、長時間演説という形がとられます。しかし、国会法第61条の規定により、議事妨害は無制限に行えません。
また、各議院規則には、質疑終局や討論終局の動議の提出についても規定されているため、現在、長時間演説により議事妨害を行うことは難しいといえます。
今回の安保法案において、与党は、問責決議案等の趣旨説明、討論、その他の発言時間を10分等に制限する動議をことごとく提出し、可決させ、野党の発言時間を制限したからです。
対する野党も最後まで徹底抗戦し、動議で制限された倍近い時間を演説した議員がいました。言論の府、ですしね。
牛歩については、平成4年 PKO法案の参議院本会議採決で、一部野党が牛歩戦術を実行し、採決が終わるまで4泊5日の徹夜国会となりました。牛歩については、次回、先例を引用する形で今回の事例を紹介したいと思います。
