一事不再議の原則と衆議院の優越
〇日本国憲法第59条2項
衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。(以下略)
○国会法第56条の4
各議院は、他の議院から送付又は提出された議案と同一の議案を審議することができない。
約2年前、「一事不再議の原則」について紹介しました。
一事不再議とは、既に議決された問題と同一の問題につき、同一会期中は再びこれを審議し、または議決することはできないという原則のことをいいます。
再議を許せば、議院の審議活動を不効率に陥らせるほか、前の議院の議決は後に覆されかねない暫定的性格となってしまうからです。よって、一時不再議は、会議体としての議院が行う審議に通じる一般原則なのです。
ただ、一事不再議と衆議院の優越には難しい解釈が存在します。
どういうことなのか、具体的に事例を考えてみたいと思います。
たとえば、参議院先議の法律案が参議院で否決されたとします。
参議院で否決されたことを受け、衆議院で同一会期内に同一の法案を提出して審議、採決を行った場合、たとえ同一法案であったとしても、一事不再議は適用されないとの解釈です。
では、この場合、なぜ一事不再議が適用されないのでしょうか。
この場合、この法案が参議院に送付されても当然に否決されますが、憲法は衆議院の優越を規定しています。
つまり、たとえ参議院で否決されたとしても、憲法第59条の規定に基づき再議決等の方法により、衆議院で法律案を成立させることが可能だからです。
よって、この場合、一事不再議は適用されない、との解釈になるのですが、実際には想定されにくい事例だと思います。
(参考)
「一事不再議の原則」平成28年7月4日
