吉川さおり 参議院議員(全国比例)
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議会雑感

予算案趣旨説明聴取のタイミング-その2

2017年2月6日

○日本国憲法第60条

予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

予算について、参議院に衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

予算案聴取のタイミング-その1」では、原則として、予算案については衆参同日に趣旨説明を聴取するのが例となっていることを紹介しました。

ただ、興味深い例もありますので、その例をひとつだけ紹介しつつ、参議院の宿命と予算案審査への備えについて触れておきたいと思います。

興味深い例とは、平成2年度補正予算案の際に発生した例のことです。

これは、衆議院での審査が終わり、参議院に送付された後に、参議院本会議で財政演説を聴取し、参議院予算委員会で趣旨説明を聴取したという例です。この例に限れば、衆議院を通過後、参議院で予算案の審査に入ったといえるのかもしれません。

[衆院通過後に参院で財政演説が行われた例]

平成3年2月28日 第120回国会 衆議院本会議
平成3年3月1日 第120回国会 参議院本会議、参議院予算委員会

また、参議院では日本国憲法第60条の規定により、衆議院から予算案が送付され、参議院が受け取った後、30日で自然成立する宿命にあります。

よって、参議院では限られた期間の予算案審査をより良いものとするため、たとえば、質疑時間の片道方式が導入されていたり、委嘱審査制度が導入されていたりするのです。

さらに、予算案の趣旨説明は、原則として衆参同日に聴取しますので、衆議院の予算案審査期間を活用して、参議院予算委員会は、趣旨説明を聴取した予算案の審査に資するため、委員派遣を行っているのです。

参議院は、従来、開会中の委員派遣においては、予算、法律案等、議案の審査等のため派遣が必要とされる場合を除いては、災害調査のための派遣及び調査会が行う派遣に限って認められてきた、という原則があります。

近年、開会中に調査のための委員派遣を行う例が残念ながら見受けられますが、予算委員会については上記の理由から委員派遣を行って然るべき委員会なのです。

もっと言えば、予算案の趣旨説明を既に聴取しているわけですから、理事会もしくは理事懇談会で政府に資料要求をした上で、予算案審査のための委員派遣を行うのであれば、30日という限られた期間の中でより充実した審査ができることに繋がるのではないでしょうか。