議事妨害-その2
○参議院先例録335
記名投票の投票時間を制限した例
記名投票により採決する場合に、必要があると認めたときは、議長は、投票に入るに先立ち、又は投票執行中に投票時間を制限することがある。その例は次のとおりである。
(1)投票に入るに先立ち投票時間を制限した例
(省略)
(2)投票執行中に投票時間を制限した例
第16回国会 昭和28年8月3日の会議において、「労働委員会において審査中の電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案について労働委員長をして次会の本会議劈頭に中間報告をさせ、報告時間を1時間以内とすることの動議」の表決を記名投票により執行中、議長は、「只今行われておりまする投票につきましては、自後5分間に制限いたします。速やかに投票を願います。・・制限時間に達しました。これにて投票は終了したものと認めます。投票箱閉鎖。」と告げ、まだ投票を終わらない者で演壇に登っていた者に対し降壇を命ずるとともに衛視にその執行を命じた。
第24回国会 昭和31年5月29日の会議において、「本日はこれにて延会することの動議」の表決を記名投票により執行中、議長は、「ただいま行われております投票については、自後5分間に制限いたします。すみやかに御投票を願います。・・制限時間に達しました。投票箱閉鎖。」と告げた。
その他同例がある。
「議事妨害-その1」では、数の及ばない少数会派が、合法的に採決に抵抗する手段の幾つかを紹介しました。今回は、安保法案採決での牛歩の事例を引きながら、先例を紹介したいと思います。
今回の安保法案をめぐり、参議院本会議で、議員一人が牛歩を5回、行いました。
(1回目:内閣総理大臣問責決議案採決、2回目:特別委員長問責決議案に対する発言時間制限動議の採決、3回目:特別委員長問責決議案採決、4回目:安保法案に対する討論時間制限動議の採決、5回目:安保法案採決=すべて記名投票)

採決を少しでも遅らせたい、その一心での行動だったと思いますが、ほかに牛歩に同調した議員はいませんでした。
議長は先例に基づき、投票執行中に投票時間を制限しましたが、その制限時間は、2分間と1分間でした。
議員一人が5回牛歩を行ったうち、議長が投票時間を制限したのは4回。最初の2回は、自後2分とし、次の2回は、自後1分。最後の1回については、投票を促すのみに留まっています。
会期終了日が眼前であれば、法案を廃案にするために牛歩戦術も有効ですが、今回は会期末まで1週間以上ありましたから、色んな意味で難しかったと思います。
