吉川さおり 参議院議員(全国比例)
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議会雑感

参院議員半数の任期満了に伴う謝辞-その2

2016年6月14日

参院議員半数の任期満了に伴う謝辞-その1」では、議員の半数が任期満了を迎える会期末の本会議では、議長が挨拶を述べ、任期満了となる議員を代表して年長議員が謝辞を述べる例となっていることを紹介しました。

この根拠は、参議院先例録552にあり、昭和31年5月24日の議院運営委員会理事会の決定にあります。

第24回国会昭和31年5月24日、議院運営委員会理事会は、謝辞は任期満了となる議員中の年長者が行うほか、他に条件を付けないこととしたのです。

しかしながら、実はそうでなかった例、つまり先例に従わなかった例が、これまで数例存在します。

第114回国会 平成元年6月22日
第159回国会 平成16年6月16日
第166回国会 平成19年7月5日

これらの共通項は、それぞれの本会議において、任期満了となる議員を代表して年長議員ではなく、元議長が謝辞を述べていることです。

任期満了議員のうち、元議長が年長議員であれば先例どおりとなりますが、少なくとも上記3例においては、元議長は年長議員ではありませんでした。

これは、第24回国会昭和31年5月24日、議院運営委員会理事会の決定事項に反します。なぜなら、謝辞は任期満了となる議員中の年長者が行うほか、他に条件を付けないこととしたためです。

上記3例は、先例に反して元議長が謝辞を述べましたが、このときの年長議員は、すべて野党議員でした。議院運営委員会に理事を出せない小会派や無所属の議員だったのかもしれません。

上記3例の元議長は、言わずもがな、第一会派の与党議員です。

第一会派であれば議院運営委員会に理事を出していますし、元議長が任期満了で勇退する際、最後に謝辞を述べる機会を与えたい、と与党の議運理事が主張すれば、それを数の少ない野党側が声高に否定することも難しかったことでしょう。

しかしながら、先例は先例であり、ちょっとしたことであっても、尊重されてしかるべき理由がある議会の先人の知恵の積み重ねです。

最近の傾向として、三権の長である議長を経験しても、さらにもう一期、議員として任期を重ねる例も増えてきています。これまでは、議長を経験すれば、その任期をもって勇退される議員が多かったように思いますが、最近は必ずしもそうではありません。

だからこそ、元議長が最後に謝辞を主張するようであれば、これからも先例は崩されていくでしょうし、年長議員でない元議長が謝辞を述べるのであれば、先例を変更するのが筋でしょう。

平成28年6月1日に閉会した第190回国会では、任期満了となる議員のうち、年長議員ではない、野党の元議長がいました。

9年前と12年前は、年長議員ではなく、元議長が謝辞を述べていたこともあり、今回はどうなることかと見守っていましたが、先例を遵守すべきという考えのもと、今国会は9年ぶりに議長挨拶と議員謝辞が行えたと同時に、先例どおり、年長議員による謝辞となりました。これは、実に15年ぶりのことでした。

今回は、年長議員の所属会派に関わらず、先例が守られたということです。